工場やクリーンルームの設計・運用プロセスにおいて、HVACは施設内の温度・湿度・気流・清浄度を一定基準に保つための心臓部です。しかし、高性能なHVACを導入しても、「なぜか床の剥離や不具合が頻発する」「クリーンルームの清浄度が思うように保てない」という悩みを抱える現場は少なくありません。
本記事では、大阪府東大阪市を拠点に、関西全域で食品工場・半導体工場の塗床工事を多数手がける株式会社テンマが、HVAC稼働下で発生しやすい具体的な床トラブルに焦点を当て、温湿度管理が塗床の性能に与える影響と、空調環境に適した最適な塗床材の選び方を分かりやすく解説します。
■HVACの概要と課題点

「HVAC」とは、「Heating(暖房)」「Ventilation(換気)」「Air Conditioning(空調)」の頭文字をとった言葉です。建物内の温度、空気質、湿度を管理する総合的な冷暖房・換気システムの総称で、快適な空間づくりに必要な複数の機能を統合的に管理するのが特徴です。
HVACの優れた性能を最大限に活かすためには、施設全体の空調環境と、基盤となる「塗床材(床材)」との密接な関係性を正しく理解しておく必要があります。しかし、このポイントは、実は工場管理者や設備設計担当者の間でも意外と知られていません。
実際のところ、床の剥離や不具合、クリーンルームの清浄度などの課題の背景には、導入されている空調環境に適していない塗床材を選んでしまっているケースが多く存在します。導入されている床材と使用条件が不一致の場合もあるため、原因の確認が必要となります。
■HVAC環境で頻発する3つの具体的な床トラブルと対策

工場やクリーンルームでは、HVACによって室内の空気環境を高度にコントロールしています。しかし、現場における日常作業と空調のバランスが崩れると、以下のような深刻な床トラブルが発生します。
1. 熱水洗浄による床の劣化(サーマルショック)
食品工場などでは、衛生管理のために日々の熱水洗浄が欠かせません。しかし、HVACによって15〜20℃程度の低い温度に保たれた床に対して、局所的に高温の熱水が投下されると、急激な熱膨張と収縮(サーマルショック)が発生し、塗膜の亀裂や剥離といった床の劣化を引き起こします。
急激な温度変化のある厳しい環境下で使用する床材は、「耐熱水衝撃性」が最重要指標となっています。例えば、ABC商会のタフクリートMHは、日本塗り床工業会のNNK-011規格(耐熱水衝撃性試験)において、95℃の熱水と10〜20℃の冷水を繰り返す過酷な温冷サイクル試験で非常に高い性能を示し、評価されている水性硬質ウレタン系塗り床材です。
水性硬質ウレタン系塗床材のなかには、500サイクルから10,000サイクルまで異常なしとする優れた耐久データを有する製品も存在します。
また、NNK規格とは別に、アイカピュールハード「HG工法」「MT工法」は、メーカー独自の耐久試験が実施されています。実際に、AGV(無人搬送車)や重量台車の往来を想定した「荷重600kgの硬質ウレタンタイヤによる据え切り試験(10,000回)」をクリアする堅牢な製品も展開されているのが大きな特徴です。
耐熱性や耐久性は、混同することなく、日々の洗浄条件(熱水温度・頻度)とAGV走行の有無など、それぞれの試験条件を分けて現場環境に適合するかを個別に評価することが極めて重要です。
ただし、高い耐熱性やHACCP International認証の取得は、すべての水性硬質ウレタン製品に共通する標準性能ではないため、採用前に各製品の詳細について、個別の確認が必須となります。
2. 冷蔵・冷凍区画の温度差や結露
冷蔵エリアと常温エリアの境界など、HVACによる温度管理の差が激しい場所では、結露が発生しやすくなります。結露が発生する場所は、塗床の白化(表面が白く濁る現象)や接着不良による剥離リスクが高まるため、注意が必要です。
塗床材は、施工時の温度・湿度によって、最終的な品質や耐久性が決定づけられます。施工時の適正温度は15〜25℃が基本とされており、5℃以下の低温環境では硬化遅延が生じ、逆に35℃以上の高温環境では急速な反応により施工に問題が生じる可能性が高くなります。
また、湿度80%以上の環境では、HVACの稼働状況に合わせた施工タイミングの調整が不可欠です。土台となる下地コンクリートの含水率については、製品仕様・施工環境によって、施工前に高周波水分計での確認が必要です。
3. 湿度低下に伴う静電気の発生と帯電防止床の関係
半導体工場などの精密クリーンルームでは、HVACによる連続的な空調管理で室内の湿度が低下すると、歩行や台車移動による静電気が発生しやすくなります。帯電した床面には目に見えないホコリや微粉塵が強力に引き寄せられるため、HVACによって清浄な空気を循環させても、要求される室内清浄度を保てなくなってしまいます。
湿度低下による静電気の対策としては、帯電防止性能のある塗床材を採用するのが一般的です。ただし、塗床材単体で対策が完結するものではありません。製品仕様、接地、施工品質、保守、使用環境を含めて性能を確認し、HVACによる適切な湿度管理(適正湿度の維持)と連動させることで、継続的な帯電防止性能を発揮するのです。
■テンマの施工事例紹介・食品工場の水性硬質ウレタン樹脂仕上げ工事

大阪府内の食品工場において、日常作業により劣化・剥離した床を、水性硬質ウレタン樹脂で改修した事例をご紹介します。既存塗膜の研磨・補修などの下地処理を行ったうえで、施工しました。
参照:施工事例「食品工場 水性硬質ウレタン樹脂仕上げ(平滑)」より
https://www.e-temma.com/gallery_list/factory/3703
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https://www.e-temma.com/contact
■HVAC環境に適した塗床材の選び方と施工のポイント

塗床材選びと施工で失敗しないための3原則をご紹介します。
①施工タイミング
HVAC稼働中は、作業工程に合わせて空調設定を一時的に調整し、「温度15〜25℃」「湿度80〜85%未満」の理想的な施工環境を確保することが重要なポイントです。
②材料選定
製品仕様、接地、施工品質、保守、使用環境を含めて性能を確認しましょう。洗浄頻度が高い食品工場は水性硬質ウレタン系、室温が安定している精密工場はエポキシ樹脂系、クリーンルームは帯電防止仕様など、HVACの運用パターンに合わせて塗床材を使い分けることも大切です。
③下地処理
含水率・平坦さ・表面強度の計測に加え、過去の現場での使われ方や油分の浸透状況まで見極めた工程数の判断が、長期的な仕上がり品質と耐久性を左右します。
■信頼できる専門業者に依頼することが重要

同じ「食品工場」「クリーンルーム」という名称の施設であっても、HVACの稼働パターンや重量台車の往来頻度、日々の洗浄方法は、施設によってそれぞれ大きく異なります。
表面的な条件だけでなく、現場の実際の使われ方や空調環境を正しく理解したうえで、最適な材料選定と施工計画を調整できる専門業者かどうかが、長期的な仕上がり品質を左右する重要な判断基準となります。
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株式会社テンマは、大阪府東大阪市を拠点に、塗床工事・コンクリート補修・アスファルト工事を専門とする「床のプロフェッショナル」です。
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